一般化について書いてみました
前回までの記事で元金定額方式と元利定額方式の返済回数や支払利息の総額を一般化した式を求めてきました。
そもそも一般化とは何かや、一般化して何が嬉しいのかを述べていきたいと思います。
ここではG.ポリア著『いかにして問題をとくか』という書籍から参照します。
この『いかにして問題をとくか』では数学の問題をとこうとする教師や生徒のために書かれたものです。様々な数学の問題をとおして問題をといていけば良いのか、解説されています。テストの問題を解くのに役立つのももちろんですが、研究やビジネスで解決したい問題や課題に対してもこの著書で述べられている考え方は解決に貢献すると思います。是非一読をお勧めします。
さて、話を戻します。著書では一般化について以下のように定義されています。
一般化は1つの対象についての考察からその対象を含む集合の考察へうつってゆくことである。あるいは又制限された集合からその集合を含むもっと大きな集合の考察に移ることである。
出典:柿内賢信訳 G.ポリア著(1954)『いかにして問題をとくか』丸善株式会社
少し抽象的でいまいちわかりづらいですね・・・
ここで集合という言葉が使われていますが、高校生のころ数学の授業で一度は学んだ方がほとんどだと思います。
厳密性に欠ける説明になるのですが、集合とは、
「ある数や与えられてる式について、数えたり計算できるものの集まり」
とざっくり理解してください。
ですので、「1つの対象についての考察からその対象を含む集合の考察へうつってゆく」とは、ある特定の計算できる式などからさらに、いろんなパターンで計算できるようにすることができるようになることです。
具体例を示していきましょう。
前回書いた記事で元利定額方式リボ払いの返済回数や支払利息の総額について解説していました。
少し振り返ってみましょう。
まず初めに「返済総額50万円、年率15%、毎月返済額2万円」で具体的な数字を使って元利定額リボ払いの返済回数や支払利息を計算しました。
この計算が先ほどの一般化の定義での「1つの対象」にあたります。
さらにここから元利均等返済の式を利用して、
返済回数を求める式である
返済総額:A
利率:r
返済回数:n
毎月返済額:x
や支払利息の総額を求める以下の式を求めました。
この式に計算したい数字を代入すれば、いろんなパターンの返済回数や支払利息の総額を計算することができます。もちろん具体例で挙げた「返済総額50万円、年率15%、毎月返済額2万円」も計算できます。
このことが先ほどの一般化の定義での「1つの対象についての考察からその対象を含む集合の考察へうつってゆくこと」または「制限された集合からその集合を含むもっと大きな集合の考察に移ること」にあたります。
ここまで一般化について説明しましたが、一般化して何が嬉しいのか考察していきます。
『いかにして問題をとくか』では一般化する目的の一つを以下のように述べています。
数に関する問題から文字(量)に関する問題に移ることは1つの新しい発展であり、われわれはデータを変化させることによりいろいろな仕方で結果が正しいかどうかを試すことができるのである。
出典:柿内賢信訳 G.ポリア著(1954)『いかにして問題をとくか』丸善株式会社
つまり、今回の元利定額リボ払いの返済回数や支払利息の総額を具体例では毎月返済額2万円で計算していました。しかし、他にも1万円や5万円などデータを変化させて求めた式から計算することができます。
このことができることによって、1万円で返済していく場合と2万円で返済していく場合では支払利息の総額にどれだけの差が出てくるのか比べることができます。
リボ払いでは毎月返済額を大きくしないと、多く利息を取られてしまうので、できるだけ毎月返済額を大きくするか、一括で返済するように勧められています。それでどれくらい被害を抑えることができるのか把握することは非常に重要ですね。
一般化はそれ自体が目的ではありません。具体例から考えて、一般化して、それが済んだら必ずいろんなパターンを計算します。そこで発見や新たな知見が生まれてくるのです。
一般化は次の具体的な計算をすることまでがセットです。
ということで、次回は前回までの記事で求めた一般化した式を利用してリボ払いの返済回数や支払利息の総額をいろんなパターンで計算していきましょう。
参考文献
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G.ポリア著 柿内賢信訳 (1954)『いかにして問題をとくか』丸善株式会社
数学ガールでは実際に数学の問題をとおして「具体例→一般化→検算」を実践しています。この記事の内容は数学ガールで学んだ考え方を大いに参考にさせて頂きました。