お金の算数

ローンや資産運用について数学的見解を交えて考察しています

資金計画を立てる際の係数

ファイナンシャルプランナー試験をしていると、試験範囲のなかで「資金計画を立てるさいの6つの係数」というものがありました。

 

  1. 終価係数
  2. 現価係数
  3. 年金終価係数
  4. 減債基金係数
  5. 資本回収係数
  6. 年金現価係数

 

はじめこれらの言葉をみても何のことか全然わかりませんでした。しかし、解説を読んでいるとなかなか便利なものだと思いました。

 

そもそも係数とは

一個以上の変数の積にかかっている定数。更に広く、ある現象の法則性が一定の数式で表される場合、それで算定される数値(やその算定式)。

 と定義されています。

数学でいえば2xでxに注目したときの"2"にあたります。

xは変数でいろいろな値に変化して、"2"は定数で常に同じ値です。

例えば3や7の倍の値を知りたい場合、2xのxに3や7を代入すると6や14という値を求めることができます。

つまり、ある求めたい値があったとき、その値を求めるために乗算する定数のことです。

 

この6つの係数、ファイナンシャルプランナーの試験では係数表というものがあって、そこに記載されている数字を使って具体的な金額を求めていきます。なので、係数自体を計算する必要はありません。どちらかというと、その係数をどうやって使えばいいのかを理解しておかなくてはいけません。

 

 

それでも、この係数自体はどうやって求めるの?と疑問に思う方もいると思います。

そこでこの記事ではそれぞれの係数の意味に加え、係数自体の具体的な計算方法と一般化を解説していきたいと思います。

 

 

1.終価係数

現在の金額を複利で運用した場合の、一定期間後の金額を求める場合に用いる係数

 例:100万円を年利2%で運用した場合の5年後の金額はいくらか?

 

100万円を1年運用すると

 

1,000,000×1.02=1,020,000(円)

 

になります。続けてこの102万円も同じようにさらに1年運用すると

 

1,000,000×1.02×1.02=1,040,400(円)

 

となり、5年後には

 

1,000,000×1.02^5=1,104,100(円)

 

になります。

終価係数は1.02^5=1.1041です。

ここで元本である100万円をA、利率2%をr、運用年数5年をnとすると終価係数は以下の式で求めることができます。

 

A×(1+r)^n・・・①

 

2.現価係数

一定期間後に一定金額に達するために必要な元本を求める場合に用いる係数

 例:年利2%で5年後に100万円を用意するためには、元本がいくら必要か?

 

先ほど求めた終価係数の式①を使うと以下の式で求めることができます。

 

A(1+0.02)^5=1,000,000

 

この式のAが求めたい元本なのでAについての式にしましょう。

 

A=1,000,000×\frac{1}{(1+0.02)^5}

 

1,000,000×0.9057=905,700(円)

 

と計算できます。現価係数は0.9057です。

ここで達成したい金額である100万円をA、利率2%をr、運用年数5年をnとすると現価係数は以下の式で求めることができます。

 

\frac{A}{(1+r)^n}・・・②

 

3.年金終価係数

毎年一定金額を積み立てた場合の、一定期間後の元利合計を求める係数

 例:年利2%、毎年20万円を5年間積み立てた場合の5年後の金額はいくらか?

 

現在20万円積み立てたとして、1年目の元利合計は

 

200,000×1.02=204,000(円)

 

になります。ここにさらに20万円積み立てるので合計404,000円です。

続いて2年目の元利合計額は以下のように計算されます。

 

200,000×1.02^2+200,000×1.02+200,000=612,080(円)

 

この計算を5年目まで続けると

 

200,000×1.02^5+200,000×1.02^4+200,000×1.02^3

+200,000×1.02^2+200,000×1.02^1+200,000×1.02^0

 

=\displaystyle{200,000\sum_{k=0}^{4}1.02^k}

 

累上の和の公式から

 

 =200,000×\frac{1.02^5-1}{0.02}

 

 =200,000×5.2040=1,040,800(円)

 

ここで毎月の積立金額である20万円をx、利率2%をr、運用年数5年をnとすると年金終価係数は以下の式で求めることができます。

 

x×\frac{(1+r)^n-1}{r}・・・③

 

 

 

4.減債基金係数

一定期間後に一定金額を用意するための、毎年の積立額を計算するための係数

 例:年利2%、5年後に100万円を用意するには毎年いくら積み立てる必要があるか?

 

 式③から毎月の積立額をxとして、金利rに0.02、運用年数nに5を代入して以下のように式を作ります。

 

\displaystyle{x\sum_{k=0}^{4}1.02^k}=1,000,000

 

この式をxについて解いていきます。

 

 

x×\frac{1.05^5-1}{0.02}=1,000,000

 

x=1,000,000×\frac{0.02}{1.05^5-1}

 

x=1,000,000×0.1922=192,200(円)

 

ここで達成したい金額である100万円をA、利率2%をr、運用年数5年をnとすると減債基金係数は以下の式で求めることができます。

 

 

A×\frac{r}{(1+r^n)-1}・・・④

 

 

5.資本回収係数

現在の一定金額を一定期間で取り崩した場合の、毎年の受取額を計算するための係数

 例:100万円を年利2%で運用しながら5年間で取り崩した場合の毎年の受取額はいくらか?

 

現在100万円あり、1年後は2%の金利が付き、そこからx円取り崩して受け取ります。

 

1年目

1,000,000×1.02-x

 

2年目は残高1,000,000×1.02-x金利2%がつき、そこからx円取り崩して受け取ります。

 

 2年目

(1,000,000×1.02-x)×1.02-x=1,000,000×1.02^2-1.02x-x

 

3年目、4年目も同じように計算し、5年目は以下のようになります。

 

5年目

1,000,000×1.02^5-\displaystyle{x\sum_{k=0}^{4}1.02^k}

 

5年目には0円になるはずなので、以下の式からxについて解けばいいことになります。

 

1,000,000×1.02^5-\displaystyle{x\sum_{k=0}^{4}1.02^k}=0

 

1,000,000×1.02^5-x×\frac{1.05^5-1}{0.02}=0

 

x×\frac{1.05^5-1}{0.02}=1,000,000×1.02^5

 

x=1,000,000×1.02^5×\frac{0.02}{1.05^5-1}

 

x=1,000,000×0.2122=212,200(円)

 

ここで取り崩していく金額100万円をA、利率2%をr、運用年数5年をnとすると資本回収係数は以下の式で求めることができます。

 

A×(1+r)^n×\frac{r}{(1+r)^n-1}・・・⑤

 

 

6.年金現価係数

将来一定期間にわたって一定金額を受け取るために必要な元本を計算するための係数

 例:5年間にわたって20万円ずつ受け取る場合、年利が2%のとき、必要な元本はいくらか?

 

式⑤から毎月の積立額を20万円として、金利rに0.02、運用年数nに5を代入して以下のように式を作ります。

 

 A×1.02^5×\frac{0.02}{1.02^5-1}=200,000

 

この式からAについてといていきましょう。

 

 A=200,000×\frac{1}{1.02^5}×\frac{1.02^5-1}{0.02}

 

A=200,000×\frac{1}{1.02^5}×\frac{1.02^5-1}{0.02}

 

A=200,000×4.7135=942,700(円)

 

ここで取り崩していく金額20万円をx、利率2%をr、運用年数5年をnとすると年金現価係数は以下の式で求めることができます。

 

x×\frac{1}{(1+r)^n}×\frac{(1+r)^n-1}{r}・・・⑥

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

  • 滝澤ななみ著 (2019)『2019-2020年版 みんなが欲しかった! FPの教科書 3級』 TAC株式会社