お金の算数

ローンや資産運用について数学的見解を交えて考察しています

数学的にみた積み立て投資

積み立て投資とは、一定の金額(または株の数量)を同じ間隔で、長期間にわたって同じ投資対象を買い続ける投資方法です。

 

積み立て投資は「いつ」、「どこに」、「いくら」投資するのか自動的に決まっているので、投資手法としては非常に単純明快です。特に投資初心者におすすめの投資手法として推進されることが多いです。

 

国も積み立て投資を推進していて、2018年から投資で得られた売却益(譲渡益)や分配金は非課税の対象となる「つみたてNISA」という制度が開始されました。

 

今ではネットで簡単に、しかも無料で証券口座を開設して、非課税で投資できます。これを機に始められている方も多いのではないでしょうか?

また、まだ始めていなくても興味がある方もいると思います。

 

でも今はコロナで業況が不安定で、今後もどうなるか分からないという状況…

元本割れのリスクのある投資はやっぱり不安と思ってなかなか始められない気持ちもあると思います。

 

そんな方に向けて、今回は積み立て投資について数学的な見解も含めながら解説していきます。

 

もちろん最終的な意思決定は読者自身で行ってください。この記事はあくまでも客観的な事実を述べているだけです。今後の投資への参考というよりは、むしろ知的好奇心の一助となればと思っています。

 

 

1.ドルコスト平均法

 まずは「ドルコスト平均法」について解説します。

ドルコスト平均法は積み立て投資のなかでも最も主流な方法といってもいいでしょう。

 

ドルコスト平均法とは、一定の金額を同じ間隔に、長期間にわたって同じ投資対象を買い続ける投資方法です。

 

実際に私自身ドルコスト平均法を実践しています。

具体的には、つみたてNISAで日本、アメリカ、全世界の三つのインデックスファンドにそれぞれ毎月1万円の計3万円を投資しています。

 

この投資手法のメリットは、リスクをかなり減らすことができることです。

 

どういうことかというと、同じインターバルで継続的に株式に投資します。なので、すべて高値で取得してしまうことを避けることができることができるのです。

高値の取得を避けれるということは、大きく価格が下がることが少なくなります。

 

株式の相場はもちろん変動します。ほとんどの場合、株式を買うタイミングが異なれば取得できる取得価格も異なります。

 

仮にある時に一括購入で株式を取得した場合、その時の取得価格にすべて依存してしまします。それによってリスクが高くなってしまいます。

 

それに対してドルコスト平均法は、取得する時期が一定の期間になっていて、株式の一口あたりの取得価格も変わってきます。

購入する金額は同じなので、株価が下がっているときは多くの株数を取得でき、上がってしまってるときは少ししか取得できません。

 

株式投資の基本原則は安く買って、高く売るです。

ドルコスト平均法ではこの原則を機械的に実行することができるのです。

 

もちろんデメリットもあります。

 

右肩上がりの相場で十分な資金があるときは、初めから一括購入していたほうが最も得をします。十分な資金があり、株価が上がっていく相場であればドルコスト平均法は最適な投資手法とは言えません。

 

ドルコスト平均法は毎回一定金額の株式を購入する方法です。それに対して毎回一定株数を購入する方法もあります。

実はこの定額購入と定数購入、平均購入単価が異なります。次の章で具体的にそれぞれの平均購入単価を計算行い、どちらのほうが割安で購入できるのか解説していきます。

 

2.一口あたりの平均購入単価の比較

 まずは以下の表1を見てください。

 

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表1.定額購入の平均購入単価(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500))

 

これは私が実際に投資している「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の令和2年2月から8月までの実績です。

これを参考に1口あたりの平均購入単価を計算してみます。すると、以下のように計算できます。

 

平均購入単価=\frac{購入金額(円)}{保有数量(口)}

=\frac{70,000}{63,854}

≒1.0963

 

したがって、1万口あたりの平均購入単価は10,963円だとわかります。

この計算を一般化してみましょう。

 

購入金額をx、投資回数をn、一口あたりの単価をa_k(k=1,2,…n)とおきます。

 

すると第1回目購入時に取得できる口数は以下のように計算します。

 

\frac{x}{a_1}(口)

 

さらに、これを第n回まで買い続けるので、合計の保有数量は

 

\displaystyle{\sum_{k=1}^{n}(\frac{x}{a_k})}

 

となります。

平均購入単価=\frac{購入金額(円)}{保有数量(口)}より、

 

\frac{nx}{\displaystyle{\sum_{k=1}^{n}(\frac{x}{a_k})}}

 

=\frac{nx}{\displaystyle{x\sum_{k=1}^{n}(\frac{1}{a_k})}}

 

=\frac{n}{\displaystyle{\sum_{k=1}^{n}(\frac{1}{a_k})}}・・・①

 

以上のように計算されることがわかります。この式①は調和平均の計算になっています。

 

後ほど解説しますが、このことが非常に重要になってきます。

 

次に比較のために定量購入をした場合の平均購入単価も計算してみましょう。

 

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表2.定量購入の平均購入単価(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500))

 

ここでは毎回1万口を定量購入する場合でシミュレーションしてみました。

早速、平均購入単価を計算します。

 

平均購入単価=\frac{購入金額(円)}{保有数量(口)}

=\frac{77,398}{70,000}

≒1.1057

 

したがって、1万口あたりの平均購入単価は11,057円だとわかります。

この計算を一般化してみましょう。

 

購入数量をy、投資回数をn、一口あたりの単価をa_k(k=1,2,…n)とおきます。

 

すると第1回目購入時に取得できる口数は以下のように計算します。

 

a_1y

 

さらに、これを第n回まで買い続けるので、合計の購入額は

 

\displaystyle{\sum_{k=1}^{n}a_ky}

 

となります。

平均購入単価=\frac{購入金額(円)}{保有数量(口)}より、

 

=\frac{\displaystyle{\sum_{k=1}^{n}a_ky}}{ny}

 

=\frac{y\displaystyle{\sum_{k=1}^{n}a_k}}{ny}

 

=\frac{\displaystyle{\sum_{k=1}^{n}a_k}}{n}・・・②

 

以上のように計算されることがわかります。この式②は算術平均の計算になっています。

 

ここまで計算してきたようにそれぞれの平均購入単価は1万口あたり

 

定額購入:10,963円

定量購入:11,057円

 

となり、定額購入のほうが割安で取得できていることがわかります。

 

さらにそれぞれの平均購入単価を計算する方法は

 

定額購入:調和平均

定量購入:算術平均

 

となっていました。

 

実は調和平均が算術平均よりも大きくなることは絶対にありません。

 

このことは数学的に証明されています。

つまり、定額購入(ドルコスト平均法)は定量購入よりも必ず低い平均購入単価で取得することができるのです。

 

しかし、この記事を書いてる時点では(令和2年8月15日)上記二つの投資手法での評価損益は定額購入のほうが高くなっています!

現在の基準価格が12,363円なので、それぞれの評価損益は

 

評価損益=保有口数×一口あたりの時価評価額-合計購入額

 

と計算されるので

 

定額購入(ドルコスト平均法

68,854×1.2363-70,000=8,943(円)

 

定量購入

70,000×1.2363-77,398=9,143(円)

 

となっています。当たり前といえば当たり前といえます。右肩上がりの相場で保有してる口数が多ければ多いほど利益が出るからです。

 

その代わり、株価が下がってしまったときは定量購入のほうが大幅に下がります。

 

リスクとは下がることもあれば上がることもあるという、株価の変動のことを言います。

ドルコスト平均法のメリットは投資のリスクを抑えることです。

 

ドルコスト平均法のほうが大きく儲かるというわけではありません。

 

どんな投資方法にもメリット・デメリットがあります。そして、そのメリット・デメリットをしっかりと理解して、自分に合った投資方法を選んでいくことが大切だということです。