お金の算数

ローンや資産運用について数学的見解を交えて考察しています

元利均等返済の毎回返済額

元利均等返済と元金均等返済

元利均等返済とは名前の通り、利息を含め毎回同じ金額を返済することを言います。住宅ローンや自動車ローンなどの消費者ローンは元利均等返済がよく使われます。毎月の返済額が同額なので、毎月の収支計画も立てやすくなるというメリットがあります。

 

元利均等返済とは別に元金均等返済というものがあります。これは毎月の元本返済額が同じで、その元本返済額に追加で利息も返済していくというものです。利息は元本に対してつくものなので、返済していけばしていくほど毎回返済する利息は減っていき、毎月の返済額も減っていきます。返済額が毎回違うので初めのほうは利息も含めた返済額が大きくなってしまうことに注意しなければいけません。しかし、支払利息の総額は元利均等返済よりも元金均等返済のほうが少なくなるというメリットがあります。事業で使われる運転資金や設備投資の借入などで元金均等返済が利用されます。

 

元利均等返済の毎回返済額の導出

今回は元利均等返済の毎月の返済額を導出していきます。

 

合計借入額A円を利率rで借入れ、毎回返済額x円でn回で完済するとき、毎回の借入残高は以下のように表現できます。

 

1ヶ月後の残高

 

(1+r)×A-x

 

 

2ヶ月後の残高

(1+r)×(1ヶ月後の残高)-x
=(1+r)×((1+r)×A-x)-x
=(1+r)^2×A-(1+r)×x-x

 

 

3ヶ月後の残高

 

(1+r)×(2ヶ月後の残高)-x
(1+r)^3×A-(1+r)^{3-1}×x-(1+r)^{3-2}×x-x

 

 

 nヶ月後の残高

 

(1+r)^n×A-(1+r)^{n-1}×x-(1+r)^{n-2}×x-・・・-(1+r)^{1}×x-(1+r)^{0}×x

 

 

ここで、 「nヶ月後の残高」の式の

 

-(1+r)^{n-1}×x-(1+r)^{n-2}×x-・・・-(1+r)^{1}×x-(1+r)^{0}×x

 

の部分について等比数列の和の公式を使います。すると、

 

-(1+r)^{n-1}×x-(1+r)^{n-2}×x-・・・-(1+r)^{1}×x-(1+r)^{0}×x

 

=-x\displaystyle{\sum_{i=0}^n (1+r)^i}

 

=-\frac{x(1-({1+r})^n)}{1-({1+r})}

 

=-\frac{x({({1+r})^n-1})}r

 

となる。これをもとの式にもどすと

 

(1+r)^n×A-\frac{x({({1+r})^n-1})}r

 

となります。この式は「nヶ月後の残高」です。したがって、はじめにn回で完済するといっていた通り、残高は「0」になっているはずです。つまり、

 

(1+r)^n×A-\frac{x({({1+r})^n-1})}r=0

 

この式から求めたかった、毎回返済額であるxについて解いていきます。

 

\frac{x({({1+r})^n-1})}r=(1+r)^n×A

 

x=(1+r)^n×A×\frac{r}{({1+r})^n-1}

 

x=A×r×\frac{(1+r)^n}{({1+r})^n-1}   ▢

 

 上記の式が元利均等返済の毎回返済額です。

 

実際の計算

試しに具体的な数字で計算してみましょう。

 

「借入金額100万円、金利3%、返済期間5年にて借入したとする。元金均等返済で毎月返済する場合、毎回の返済はいくらになるか求めよ。」

 

毎月返済なので金利0.03÷12=0.0025、5年なので返済回数は60回となります。したがって、先ほどの式に代入していくと

 

1,000,000×0.0025×\frac{(1+0.0025)^{60}}{({1+0.0025})^{60-1}}

 

2,500×7.1874…=17,968

 

つまり、毎回17,968円ずつ返済することになります。

ちなみに支払利息の総額は

 

17,968円×60回-1,000,000=78,080

 

と計算できます。