ラグランジュ乗数法を用いた効率的フロンティアの導出
前回の記事でポートフォリオ理論における「効率的フロンティア」を数式で説明しました。
- 効率的フロンティア
これは目的関数であると制約条件である及びを明示したにすぎません。最終的な目的としては、上記の制約条件を満たしつつ、目的関数(ここではポートフォリオの分散)が最小となる構成比率のベクトルを求めることです。
この問題のように条件が与えられているもとで、ある関数の極値を求めることを「条件付き極値問題」といいます。このときの解決方法として有力になるのが「ラグランジュ乗数法」です。この記事では上記に示したポートフォリオ理論における効率的フロンティアの導出をラグランジュ乗数法を用いて解いていきます。
ラグランジュ関数を作り、偏微分してゼロと置く
先に示した効率的フロンティアの最適化条件から、ラグランジュ関数を作ると以下のようになります。
この式(1)をそれぞれで偏微分します。
式(2)を「」となるように式変形します。
式(5)に左からを掛けます。
制約条件よりとなるので以下の式を得ます。
また、同じく式(5)に左からを掛けます。
制約条件よりとなるので以下の式を得ます。
との値を求める
式(6)、(7)より以下のような2元連立方程式が得られます。
これを行列によって表現します。
わかりやすくするために係数行列の要素を他の文字に置き換えていきます。
係数行列の非対角要素である「」と「」は同じ値になっているので、これを「」と置きます。
また、係数行列の左上、右下それぞれの要素を以下のように置きます。
上記の表現を使って、式(8)を置き換えると
となります。、に掛けられるは以下のように移項することができます。
また、以下のような係数行列の行列式を作ることができます。
以上の数式を使い、とを求めましょう。
式(9)にの逆行列を掛けます。
これを解いていきます。
よって、とは以下のように求めることができます。
最適なポートフォリオの構成比率ベクトルの式を導出する
式(11)を式(5)に代入すると最適なポートフォリオの構成比率のベクトルが以下のように示すことができます。
また、この式(12)をに関して整理すると
となり、「」、「」に置き換えると以下の式(13)ようなに関する一次式になることがわかります。
や は既知である、それぞれの資産によるリターンやリスクを代入すれば求まります。最低限達成したい平均リターン決めればポートフォリオの構成比率を式(13)で計算できます。