お金の算数

ローンや資産運用について数学的見解を交えて考察しています

元利定額方式リボ払い:「返済回数」及び「支払利息の総額」の一般化

 

前回は元金定額方式リボ払いについて解説しました。

今回はもう一つの定額方式、元利定額方式リボ払いについて解説していきます。

 

元利定額方式リボ払いは、毎回支払う利息と元金の合計が同じになるように設定されています。

具体例でみていきましょう。

 

返済総額50万円、年率15%、毎月返済額2万円

 

で設定されている元利定額方式リボ払いなら第1回の支払利息は

 

500,000円×0.0125=6,250円

 

0.0125は15%÷12か月

 

元金は

 

20,000円-6,250円=13,750円

 

となります。

毎月の支払総額が2万円と定められているので、利息の分だけ元金の支払いが減少します。元金定額方式なら元金を2万円返せるのですが、元利定額方式は「2万円-支払利息」分しか元金を返済できません。

 

なので、元金定額方式よりも元利定額方式のほうが、返済期間が長くなり、支払利息も多くなります。

実際にシミュレーションしてみました。(表1)

 

 

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表1 元利定額方式リボ払い(返済総額50万円、年率15%、毎月返済額2万円)

 返済回数は31回で支払利息の合計は103,248円。

比較のために元金定額方式リボ払いでも同じ条件でシミュレーションしてみました。(表2)

返済回数は25回で支払利息の合計は81,250円。

元利と元金で2万円以上の差が出てくるんですね・・・

返済総額が多くなったり、利率が高くなったり、毎月の返済額を少なく設定してしまえば、さらに大きな差が生まれます。

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表2 元金定額方式リボ払い(返済総額50万円、年率15%、毎月返済額2万円)

 元利均等返済の怖いところは毎月の返済総額が決まっているがゆえに、毎月返済できる元金が少なくなってしまうところにあります。

そのことが原因で返済総額や金利が同じでも返済回数や支払利息が多くなってしまいます。

また、元利定額方式は元金定額方式と違い、簡単に返済回数を計算できません。

(元金定額方式はの返済回数は「返済総額÷毎月返済元金」で求めることができます。)

 

もちろんシミュレーションしてみればわかるのですが、ここではあえて元利定額方式の返済回数を求める式を導出していきたいと思います。

 

元利定額方式の返済回数を求める式を導出するにあたって、以下の元利均等返済の毎月返済額を求める式(1)を利用したいと思います。

 

 毎月返済額=返済総額×利率×\frac{(1+利率)^n}{(1+利率)^n-1}\tag1
 

 

この式は返済総額、利率、返済回数が決まっていて、毎月元利均等でいくらずつ返済すればいいのか求めるために使います。

 

例えば返済総額100万円、利率0.25%、返済回数60回なら毎月返済額は以下のように求めることができます。

 

 1,000,000×0.0025×\frac{(1+0.0025)^{60}}{(1+0.0025)^{60}-1} =2,500×7.1874=17,968

 

この式の導出は以下の記事で解説しています。

 

dic-eft-sr3.hatenablog.com

 

この式では返済総額、利率、返済回数から毎月返済額が求められました。

 

 

 f(返済総額、利率、返済回数)=毎月返済額

 

ここで話を戻して、元利定額方式リボ払いについて考えてみましょう。

元利定額方式リボ払いでは返済総額、利率、毎月返済額がわかっています。

つまり、式(1)を変形していって

 

 f(返済総額、利率、毎月返済額)=返済回数

 

という式を導出すれば、それが「元利定額方式リボ払いの返済回数を求める式」になるのです!

 

それでは式を変形していきましょう。

 

簡潔に記述するために以下のように書き換えます

 

返済総額:A

利率:r

返済回数:n

毎月返済額:x

 

すると式(1)は以下のように書き直されます。

 

  x=A・r・\frac{(1+r)^n}{(1+r)^n-1} \tag{1'}

 

それでは導出していきます。

 

\frac{(1+r)^n}{(1+r)^n-1}=\frac{x}{Ar}

 

\frac{(1+r)^n-1+1}{(1+r)^n-1}=\frac{x}{Ar}

 

1+\frac{1}{(1+r)^n-1}=\frac{x}{Ar}

 

\frac{1}{(1+r)^n-1}=\frac{x}{Ar}-1

 

(1+r)^n-1=\frac{Ar}{x-Ar}

 

(1+r)^n=\frac{Ar}{x-Ar}+1

 

(1+r)^n=\frac{Ar}{x-Ar}+\frac{x-Ar}{x-Ar}

 

(1+r)^n=\frac{x}{x-Ar}

 

\log{(1+r)^n}=\log(\frac{x}{x-Ar})

 

n・\log{(1+r)}= \log(\frac{x}{x-Ar})

 

n=\frac{\log(\frac{x}{x-Ar})}{\log{(1+r)}}

 

導出できました。

返済回数は整数になるので、小数点以下は切り上げます。切り上げを示す"⌈⌉"という記号を使って表します。

 

n=⌈ \frac{\log(\frac{x}{x-Ar})}{\log{(1+r)}}⌉ \tag2

 

この式(2)で元利定額リボ払いの返済回数を求めることができます。

実際に正しいのか試してみましょう。

先ほどの例から返済総額50万円、年率15%、毎月返済額2万円なら返済回数は31回になるはずです。式(2)に代入して確かめます。

 

⌈\frac{\log(\frac{20000}{20000-500000×0.0125})}{\log{1.0125}}⌉=⌈\frac{\log1.4545}{\log{1.0125}}⌉

 

 =⌈\frac{0.374662}{0.012422}⌉=⌈30.16⌉=31

 

確かに返済回数を求めることができそうです。

 

ついでに支払利息の総額を求める式は

 

 毎月返済額×返済回数-返済総額

 

なので、

 

 x・⌈\frac{\log(\frac{x}{x-Ar})}{\log{(1+r)}}⌉-A

 

と計算できます。

先ほどの例では

 

 20,000・31-500,000=120,000

 

と計算され12万円の利息だとわかります。

これらの式さえ分かっていれば、元利定額方式リボ払いの返済回数及び支払利息の総額を求めることができるので、もし皆さんが元利定額方式リボ払いを勧められてこられれば利用してください。